トイ・プロブレムとは

トイ・プロブレム(おもちゃの問題、英: Toy problem)とは、人工知能分野においてパズルのような簡単な問題のことです。

トイ・プロブレムとは

人工知能の分野では、古典的なパズル、ゲームや問題への挑戦がトイ・プロブレムとして扱われます。
トイ・プロブレムとしては次のようなものが該当します。

  • 迷路
  • 三目並べ
  • ハノイの塔
  • エイト・クイーン

このようにトイ・プロブレムは基本的にゴールや目的が決まっているものが考えられていました。
しかし、さらにゴールが複雑な以下のようなゲームについてもトイ・プロブレムとして間違いありません。

  • チェス
  • 将棋
  • 囲碁
  • ポーカー
  • ビデオゲーム

このように難易度の高いトイ・プロブレムに対し、人工知能は次々挑戦しています。

トイ・プロブレムに挑戦する人工知能

初期の人工知能研究では、いきなり現実の大きな問題を解決しようとはしませんでした。
まずはコンピュータで扱いやすい簡単な問題であるトイ・プロブレムを考えたのです。

1959年に IBM のエンジニア、アーサー・サミュエルが、「チェッカー」をプレイするプログラムを開発し、機械学習という分野を定義しました。
そして、人工知能は難易度が高いと言われるトイ・プロブレムに次々と挑戦していきます。
1900年代には人工知能にとって人間を凌駕するのは難しかったトイ・プロブレムについても、2000年以降次々人間を上回る成果を出すようになっています。

チェスへの挑戦

1996-1997年に IBM が開発したディープ・ブルーは、チェスの名人カスパロフに挑戦しました。
1996年の初回はカスパロフが勝利したものの、1997年にディープ・ブルーはカスパロフに勝利しました。

ディープ・ブルーの勝利は、チェスという難解ゲームで人工知能が人間に勝利したと世界中へ広まりました。

将棋への挑戦

チェスが攻略されて数年経っても、将棋はなかなか人工知能に攻略されませんでした。

人工知能にとってチェスよりも将棋が難しかった理由は盤面の広さです。チェスは8×8の64マスの盤面ですが、将棋は9×9の81マスになります。この差がコンピュータに必要な計算量に大きな影響を及ぼしました。

2011年将棋の米長邦雄永世棋聖は株式会社ドワンゴ主催の第1回将棋電王戦で、伊藤英紀氏が製作したコンピュータ将棋プログラムボンクラーズと対戦しました。
米長永世棋聖はボンクラーズに破れ、将棋の人工知能プログラムが将棋のトップ棋士に勝てることを証明しました。

その後も継続された電王戦では、将棋の人工知能がトップの将棋プロに対し互角以上の成績をだしています。

囲碁への挑戦

将棋のトッププロが人工知能に敗れても、ボードゲーム仲間の囲碁はまだまだ人工知能の攻略から安泰と考えられていました。
将棋は9×9の81マスですが、囲碁の盤面は19×19の361マスになります。この盤面の広さはコンピュータが単純に計算するにはあまりに広すぎるのです。

しかし、安泰と考えられていた囲碁にも人工知能に敗北する時が訪れました。


2015年 Google DeepMind が開発した AlphaGo (アルファご)はプロ棋士樊麾(ファン・フイ、Fan Hui)を互先(ハンディキャップなし)で勝利しました。さらに、翌年の 2016年3月15日には、世界最高レベルのプロ棋士李世乭(イ・セドル、Lee Sedol)との五番勝負で3勝を挙げ勝利しました。

361マスという盤面の広さからコンピュータが勝利するには最も難易度が高いと考えられていた囲碁への勝利は、世界中に衝撃をもたらしました。

トイ・プロブレムに対する人工知能への失望の歴史

人工知能において、迷路・チェスなどのトイ・プロブレムに挑戦して人間を越えてきました。
しかし、過去には人工知能はトイ・プロブレムは解くことができても、現実の複雑な問題は解けないとも考えられました。

特に、トイ・プロブレムへの失望は第一次AIブームの終焉をもたらし、1970年台に人工知能の研究は冬の時代を迎えるきっかけとなりました。

参考

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